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『アンダスタンダブル?』 at アトリエヘリコプター [見た芝居]

五反田のアトリエヘリコプターというところで
『アンダスタンダブル?』という芝居を観ました(9月28日の公演)。
面白かったのでそのレポート。


『アンダスタンダブル?』は日本の劇団「五反田団」とフランスの劇団「ASTROV」のコラボレーション。
日本語とフランス語と片言の英語による1時間10分のキュートなお芝居です。

五反田団は前田司郎という作家・演出家が主催する有名な劇団らしい・・・すいません、知りませんでした。『アンダスタンダブル?』見に行かない?と人に誘われるまで知りませんでした・・・

で、僕は知らなかったけれど、すでに有名な劇団で、ヨーロッパ公演などもしていて、その時に、
劇団「ASTROV」を主宰するジャン・ド・パンジュという演出家がこれを見て、
めちゃおもろいやん、と思ったのが、コラボの始まり。
前田司郎が台本をつくり、ジャン・ド・パンジュの演出で、
3人の日本人俳優と3人のフランス人俳優によって演じられました。


舞台の上に、こう、横に、長いベンチがあって、まず日本人3人が出てきて、左手に並んで腰かけます。左から女、女、男の順。次にフランス人が出てきて、右手にやはり3人並んで腰かけます。こちらは、右から、男、男、女の順。日本人側の男と、フランス人側の女が、中央寄りで、微妙な距離感を空けて隣り合っている。

芝居が始まり、日本人(男)がフランス人(女)に話しかけます。ハロー!とか・・・2つのグループは知り合いではなさそうです。ちょっとやり取りがあって、日本人はフランス語が話せない、フランス人は日本語が話せない、両者の唯一の共通言語は「片言の英語」だけ、ということがわかりますが、そこで日本人(男)がフランス人(女)に、唐突に「アイ・ラブ・ユー」と言います。

フランス人がびっくりして、なにゆうてんの。うちら、いま会ったばっかりやないの。お互いのことなんにも知らへんし、だいいち、会話とかぜんぜん成立してないし・・・(って、ここ、書いていて、なぜか大阪弁になってしまいました。どうしてですかね?「片言の英語」っていうところが、僕の片言の大阪弁とかぶって来るんでしょうか?でも、こんなことしてたら、大阪の人に怒られますよね。)

・・・ですが、ともかく、フランス人はそのようなことを言って、さあ、これから、愛とコミュニケーションをめぐる面白くも可笑しいイナターナショナルなお芝居が始まる・・・まあ、そんな感じ・・・


このお芝居、面白いところがいろいろとあるんですけれども、例えば・・・

舞台上には6人の俳優がいて、ああ、これは6人の登場人物がいるんだなと初めは思うんですが、いや、実は、登場人物は2人だけらしいぞ、ということがだんだんわかってきます。
日本人3人でひとりの日本人を演じている。フランス人3人でひとりのフランス人を演じている。
登場人物的には、日本人男子とフランス人女子の2人なのかなとも思えますが、結局のところはよくわからない。この“日本人男子”を構成するのは2人の女子とひとりの男子というわけで・・・

独り言とか、いわゆる“内省”とかの時は、3人がそれぞれの母国語で相談したりします。
登場人物同士の会話は片言の英語・・・

それぞれの登場人物の“メンバー”っていうのか、その3人の中では、ローテーション的に“主な担当者”が入れ替わります。こう、ツール・ド・フランスで先頭が時々入れ替わりながらレースが進む・・・あれみたいに“先頭”が替わりながら劇が進む。だから、日本人男子とフランス人女子の会話だったのが、いつのまにか日本人女子とフランス人男子の会話になっていたり、また男子同士だったり、女子同士だったり、興奮してくると、会議みたいに、3対3で対話が交差したりさえする・・・
つまり、2人の登場人物のセックスとかジェンダーとか、そういうのはいわゆる男/女的カテゴリーに固まってはいなくて、もっと自由な感じです。よくある「男と女の話」みたいなものではない、もっと自由な広がりを持っていて、それがこの芝居の大きな魅力。


日本人、フランス人っていう違いも、そんな、いわゆる“両国の文化の違い”的な方向には行かないから、それもいいです。

初めは、ちょっとパターン的に見えるんですけど・・・
唐突に「アイ・ラブ・ユー」って言う日本人は、例えば、情緒的とか、直感的とか・・・
それで、フランス人が、これに論理的に、まあ、デカルト的に(?)応じるみたいな・・・
フランス人が日本人の“理解不能”なメンタリティーをオリエンタルと評したりもする・・・

でも、そういうカルチャーショック的なものは『アンダスタンダブル?』のテーマではなくて、
日本人ってそういうとこあるよね、フランス人ってそうだよね、みたいなところは確かにあるんだけれど、でも、ポイントは、日本人とフランス人だと言語コミュニケーションとるのめっちゃむずかしくね?ってことで、日本人ってさぁ・・・とか、フランス人ってさぁ・・・みたいなのは、あまり視界に入ってこない。日本人とフランス人でなくてもいいくらい・・・
インターナショナルなコラボ演劇のはまりやすい“文化論”的な罠にはまっていないところが、
自由で、すがすがしいなあ、と僕は思いました。


あと、すごく面白いところは・・・
“2人”はデートするんですよね・・・映画に行ったり、美術館に行ったり・・・
映画は、“2人”の“共通言語”である英語の映画。さらに「台詞が少ない」ということで、戦争映画を見ることになる。それで・・・ここんとこ説明むずかしいんだけど・・・2人の俳優がいま日本人とフランス人をやっているとすると、まあ、とりあえず、あと4人、俳優が残っている計算になって、この4人が戦争映画をやります。戦闘機とか、銃撃戦とか、パラシュートとか、パラシュートが地上に降りると、地上での人間ドラマとか、ぜんぶやる。でたらめ英語でぜんぶやります。それだけでも面白いんだけど、さらに・・・

これは、そのあとの美術館の場面でも同じで、“2人”を演じていない4人が展示してある絵画を次々に描き出していく。十字架から降ろされたキリストと聖母マリアと聖ヨハネと、みたいに・・・

それで、これだけでも面白いんだけど、さらに、ここでは、俳優たちが目まぐるしく役を取り替えるので、それがまたスリリングで面白いんです。
役を取り替えるっていうのは、つまり・・・
映画とか絵画とかの役をやってる4人の誰かが、デートしている“2人”のところへ行って「替わってくれ」と要求すると、言われた役者は替わらないといけないらしく(このあたりはすごくインプロヴィゼーション的にやってる感じがします)、そうすると、いままでデートしていた役者が大急ぎで他の3人に合流して、戦争をやったり、絵をやったりします。衣装とか小道具とかはまったくないんです。身体を使ってみんなでやる。テアトル・ド・ラ・コンプリシテみたいな繊細さとは違うんですが、その即興的な勢いがすばらしい・・・


あとひとつだけ・・・
会場のアトリエヘリコプターがまたよかったです。
昔「○○製作所」だったところを、きれいに掃除して、椅子を段々に並べて小さな劇場にしました・・・みたいなキュートな劇場です。『アンダスタンダブル?』のすがすがしい若さにぴったりのスペースでした。

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