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柴幸男演出 『チャイニーズスープ』 [見た芝居]

アゴラ劇場に『チャイニーズスープ』という芝居を見に行ってきました。
平田オリザ作、柴幸男演出です。

11月10日にベルリンの壁崩壊から20年をむかえたばかり。
ちょうどその旬の素材を使って美味しく・・・みたいな軽い作品。

ベルリンの壁崩壊で職を失った東西ドイツのスパイ二人。
あれから20年後、二人はチャイニーズスープをつくりながら、
思い出を語ったり、古い秘密を暴露したり、スパイの現在を嘆いたり・・・

元東ドイツスパイを演じる土井通肇さん(現在70歳だそうです)が、
なんとも言えないいい味のスープをつくっている。

台本は平田オリザ。
テーマが微妙ではあるんですが、
『ヤルタ会談』のように、才に走って野暮になるというところはまぬがれて・・・

これを『わが星』の柴幸男が演出しています。
パンフレットによると、二人でスープをつくるというのは彼の演出らしくて、
イスタンブールの海辺のテラスっていう場面設定とは完全にちぐはぐなんですけど、
これがすばらしい。

舞台の上でジャガイモを切って、玉ねぎを刻んで、人参の皮をむいて、
卓上コンロに火をつけて、大鍋をのせて、
その中に、ジャガイモを入れて、人参を入れて、玉ねぎを入れて、
それから、ジャガイモの皮と人参の皮と玉ねぎの皮を入れて、
それから、まな板と包丁とフライパンも放りこんでしまう。
さて、なにができるやら・・・

けれど、柴幸男演出の最大のポイントは、ひょっとすると、
開演前にあるのかもしれない。

彼は開演前に舞台に現れ、携帯電話を切ってください、などなど、一通りのルーティーンを述べたあと、
自己紹介をして(ここで拍手がわきます)、それから、あそこに座っているおじさんは・・・と、
登場人物から、シチュエーションまで、すべて説明してしまうのです。

言い忘れましたが、二人の元スパイのうち元東ドイツのスパイの方は、
芝居が始まる前から舞台上の椅子に腰かけてパイプを吸っています。

で、これは・・・
状況は絶対説明しない、話のラインは台詞の端々から少しずつ描き出されてゆくのだ、っていう
平田オリザの「リアル」な作劇術を最初からぶち壊しにしているわけです。

面白いでしょう?

あと、50歳と70歳の俳優に27歳の演出家っていう、これが魅力的です。
若者たちでつくる芝居も魅力的だけど、こういうミックス感がなんとも新鮮。

夜の8時に始まって9時に終わる、
「ほのぼの」と形容していいのかわからないけれども、
まあ、寒い夜に温かいチャイニーズスープもいいよ、っていう芝居でした。

IMG_0175_edited-1.jpgというわけで、写真はストーブの炎にぽかぽかしている、アゴラ劇場の待合室。

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